\(\sqrt2\)は実数

2乗すると\(2\)になる正の実数の存在を区間縮小法で示します。縮小区間列として何を使うかでいろいろな変種がありえますが、ここでは本質的には連分数展開を使います。ただし、連分数の一般論は使わず、\(\sqrt{2}\)限定で議論します。

まず、天下りに、数列\(\langle r_n\rangle\)を \[ \begin{aligned} r_0 &= 0 \\ r_{n+1} &= 1+\frac{1}{1+r_n} \end{aligned} \] で定めます。この数列について、以下の五つの主張を順に示していきます。

主張1
常に \(r_n\in[0,2]\) が成り立つ。
証明
\(n\)についての数学的帰納法。
主張2
\({r_n}^2\lt2\) ならば \({r_{n+1}}^2\gt2\) が成り立つ。 \({r_n}^2\gt2\) ならば \({r_{n+1}}^2\lt2\) が成り立つ。
証明
\({r_{n+1}}^2-2=\dfrac{2-{r_n}^2}{(1+r_n)^2}\) より明らか。
主張3
\(n\)が偶数ならば \({r_n}^2\lt2\) が成り立つ。 \(n\)が奇数ならば \({r_n}^2\gt2\) が成り立つ。
証明
主張2と \({r_0}^2\lt2\) より明らか。
主張4
\(n\)が偶数ならば \(r_n\lt r_{n+2}\lt r_{n+3}\lt r_{n+1}\) が成り立つ。
証明
主張3と \[ \begin{aligned} r_{n+2}-r_n &= \frac{2(2-{r_n}^2)}{3+2r_n} \\ r_{n+3}-r_{n+2} &= \frac{2-{r_n}^2}{(3+2r_n)(7+5r_n)} \\ r_{n+1}-r_{n+3} &= \frac{2(2-{r_n}^2)}{(1+r_n)(7+5r_n)} \end{aligned} \] より明らか。
主張5
\[ 0 \lt \frac{r_{n+3}-r_{n+2}}{r_{n+1}-r_n} \le \frac{1}{21} \]
証明
\[ \begin{aligned} \frac{r_{n+3}-r_{n+2}}{r_{n+1}-r_n} &= \frac{1+r_n}{(3+2r_n)(7+5r_n)} \\ \frac{1}{21}-\frac{r_{n+3}-r_{n+2}}{r_{n+1}-r_n} &= \frac{2r_n(4+5r_n)}{21(3+2r_n)(7+5r_n)} \end{aligned} \] より明らか。

主張4より、\(a_n=r_{2n}\), \(b_n=r_{2n+1}\) とおくことで \([a_0,b_0]\supset[a_1,b_1]\supset[a_2,b_2]\supset\cdots\supset[a_n,b_n]\supset\cdots\) をみたす区間列を構成することができます。さらに主張5を使って \(\lim_{n\to\infty}(b_n-a_n)=0\) を示すことができるので、区間縮小法を適用して、\(\bigcap_{n}[a_n,b_n] = \{s\}\) をみたす実数\(s\)の存在がいえます。

\(s^2\)は\(\{{r_0}^2, {r_2}^2, {r_4}^2, \ldots\}\)の上限なので主張3より \(s^2\le2\) が成り立ちます。\(s^2\)は\(\{{r_1}^2, {r_3}^2, {r_5}^2, \ldots\}\)の下限なので主張3より \(s^2\ge2\) が成り立ちます。したがって、\(s^2=2\) です。すなわち、\(s\)が求めるものであることがわかります。