書評(数理論理学)

教科書など

付値か名前か

数理論理学の教科書で論理式の解釈に付値を使っているか名前を使っているか、目についたものだけリストにしてみました。網羅的なものにはなっていませんし、網羅的にすることを目指してもいません。抜けがあることはご承知ください。

解説

一階述語論理で論理式の解釈を定義する際には、量化子の扱いで一工夫が必要になります。\(\forall x\,\varphi(x)\)の直観的な意味は、「\(x\)の動く範囲の任意の\(d\)について\(\varphi(d)\)が成り立つ」です。これをこのまま書き換えて、構造\(\mathscr{I}=(\lvert\mathscr{I}\rvert,c^{\mathscr{I}},\ldots,f^{\mathscr{I}},\ldots,p^{\mathscr{I}},\ldots)\)における\(\forall x\,\varphi\)の解釈を、そのまま、\[\mathscr{I}[\![\forall x\,\varphi]\!]=\prod_{d\in\lvert\mathscr{I}\rvert}\mathscr{I}[\![\varphi[x:=d]]\!]\]で定義することはできません。構文空間に属する対象\(x\)に意味空間に属する対象\(d\)を代入できないからです。

これに対処する方法は、主に二つ知られています。

付値
解釈の引数に\(\rho:\operatorname{Var}\to\lvert\mathscr{I}\rvert\)を追加して、\[\mathscr{I}[\![\forall x\,\varphi]\!]\rho=\prod_{d\in\lvert\mathscr{I}\rvert}\mathscr{I}[\![\varphi]\!]\rho_{x:=d}\]で定義する。 ただし、\[\rho_{x:=d}(y)=\begin{cases}\rho(y)&y\not\equiv x\text{のとき}\\d&y\equiv x\text{のとき}\end{cases}\]
名前
各\(d\in\lvert\mathscr{I}\rvert\)に対して定数記号\(\underline{d}\)を追加して言語を拡張し、\[\mathscr{I}[\![\forall x\,\varphi]\!]=\prod_{d\in\lvert\mathscr{I}\rvert}\mathscr{I}[\![\varphi[x:=\underline{d}]]\!]\]で定義する。
付値
名前
両方

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鴨 浩靖